随筆石と竹 「ある一つの念願」

1月0回、2月1回、3月7回。

今年に入っての私の本番(人前での演奏)の数である。

極端ですがな。おまけに3月はスケジュールがバッティングして1回お断りせざるを得なかった。もう少しうまく散らばってくれればいいのであるが、無いときゃ無い、続くときゃ続く、まあ世の中そんなものである。

3月の7回の内訳(内容)は、知人の箏演奏家のリサイタル助演、レッスン場として使わせていただいている公民館の「公民館まつり」に受講生と参加、ライオンズクラブ例会のゲスト演奏、タクシー会社の優良運転者表彰式でのゲスト演奏、そして外国人旅行者への楽器紹介を兼ねた演奏が3回であった。

この7回の演奏で何よりも嬉しかったことは、聴いてくださった殆どが尺八や邦楽に馴染みのない方々だったということである。もちろん、何度も私の演奏を聴いてくださる方はありがたく、いくら感謝してもしきれない。しかしそれ以上に、私との接点によって尺八に触れていただく人々には、(その場においては)私が尺八界の代表選手としてその魅力を最大限にお伝えせねば、と、身の引き締まる思いがするのである。

「君の尺八を聴く人が、その人の人生で一回きりの尺八になるかもしれない。そのことを思って吹きなさい。」

前にも記したことがあるが、恩師横山勝也先生は生前このお言葉を私にくださった。爾来この想いは常に私の胸の中にある。

幸いなことに、いずれの会場でもたいへん喜んでいただくことが出来た。外国人旅行者へのパフォーマンスの後には、私が吹いた尺八をその場でお渡しして体験をしてもらい、毎回盛り上がった。タクシー会社のゲスト演奏においては、初めから終わりまで水を打ったような静けさで、”こりゃ~やっちまったか”とビビっていたら、後から「皆とても感動していました」との感想をいただき胸を撫で下ろした。また、ライオンズクラブでの演奏では「ウチのメンバーがこれほど静かに聴き入ったのは初めてです」と嬉しいお褒めの言葉を頂戴した。

何とか尺八の紹介を悪くない形で出来たとは自負するが、残念ながら“ぜひ尺八を始めてみたいです”という声を聞くことは叶わなかった。過去には数人だが私の演奏を聴いて尺八を始めた方がおられた。しかし近年はそういう人に出逢うことがない。

今年はありがたいことに4月以降もいろいろな場で吹かせていただくことが決まっている。

何とか”石川さんの尺八を聴いて私も始めることにしました”という人に出逢いたい。

私の一つの念願である。

 

 

 

 

 

随筆石と竹 「ある一つの念願」” に対して2件のコメントがあります。

  1. 山戸朋盟 より:

     本曲はそのように「利用」することが出来るんですね。しかし、それが出来るためには、本曲を理解し、いつでも自分にも納得できる演奏が出来るように準備しておかなければならない。そのためには、本曲が好きで、本曲に自信がなければならない。今度緑区の定演で秋田菅垣をやるが、そういう覚悟でやってみます。

    1. admin より:

      山戸さん
      コメントありがとうございました。私の貧弱な音、拙い技術では自信は持ちようがありませんが、覚悟だけは持って演奏に臨んでいます。今後ともよろしくお願い申し上げます。
      石川拝

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