随筆石と竹 「KSK」

 

尺八はインターナショナルな楽器である。

特に近年はヨーロッパの様々な国と、台湾から中国本土への広がりがもの凄い勢いで進んでいる。私の周りも例外ではなく、このところ色々な国の尺八吹きとお会いする機会が多くなってきた。

 

6月某日、オーストラリア人の尺八研究者から依頼があり、尺八に関する2時間ほどのインタビューを受けた。普段日本人尺八吹きともこれほどのことは話さない、というような突っ込んだ内容であった。

その直後にポーランドを訪れた際には、公演会場に3人のポーランド人が駆けつけてくれ、彼らに請われて公演前にミニ・ワークショップを行なった。2年前の訪波(漢字表記でポーランドは波蘭土)時、まだこの国には尺八は広まっていなかったので、今回ポーランド人が尺八を吹いている姿を見てとても感激した。

バタバタと日本へ戻ってくると、以前に教えたことのあるアメリカ人が2人、夏休みで訪日するのでレッスンをして欲しいという連絡が入った。2人のレッスン希望日がうまくずれていたため、日程を調整し、それぞれに集中レッスンを行なった。あまり言葉を交わさなくとも、一緒に吹いていると会話をしているようで楽しい。

時をほぼ同じくして今度は、日本に短期就業に来ているインド人から、”将来的に「鹿の遠音」を吹きたいので尺八を教えてほしい”というメールが届いた。爾来、月3回のペースで受講し、メキメキと腕を上げている。今年中には帰国するとのことなので、その後はスカイプでレッスンしようかと話している。ぜひともインドで尺八を広めてもらいたいと願う。

そうそう、外国人といえばパヴェルさんを忘れてはいけない。2年前の冬より日本に来て、早くも岡山・倉敷を中心に演奏、教授活動を繰り広げているロシア人である。私と初めて会った時からすでに上手かったが、近頃は私よりもはるかに良い音を出すようになってしまった(クヤシイ!)。それに加え、背が高くシュッとしたイケメンである。これじゃあ周りの人がほっとかないだろうと思っていたら、案の定この度テレビ番組に取り上げられることになった。BSジャパンで月曜夜9時から放映されている『ワタシが日本に住む理由』という55分番組がそれで、その一回のメインゲストとしてパヴェルさんが出演する。今のところ9月19日が放映予定日らしい。私とのレッスン風景もVTRに入っているとのことなので、ちょっとワクワクしている。

 

それほど外国人に向けてアピールしているわけでもない私ですら、このようなインターナショナルな状況である。

私が親しくさせていただいている二人のKさんは、演奏が魅力的、かつ英語も堪能なため海外から引っ張りだこの状態である。片方のKさんは一年の内、半分以上を海外に出かけ、外国人の門人が200名を超えているとのこと。もう一人のKさんも年に何度も外国から招聘を受け、日本にいる時はスカイプレッスンの希望者が引きも切らない状況だそうだ。私の門人の小濱明人君もここ数年ヨーロッパ、アメリカ、台湾など多くの国からコンサートやレクチュアの要請受け、国内の活動と合わせ忙しくしている。

国内の一部では絶滅危惧種とすら囁かれている尺八であるが、この海外への広がりをみると逆に、たくさんの楽器の中でも、多くの展望と可能性を有している楽器だと断言出来る。

 

「KSK」とは、私が所属している「国際尺八研修館(Kokusai Shakuhachi Kensyukan)」の略称である。日本語のローマ字表記の頭文字がそのまま世界で通用するようになっていることも、Shakuhachiがワールドワイドな楽器となったことの証左ではないか。この拙文を書くにあたって検索してみたところ、日本国内以外にヨーロッパ、パリ、北米の支部が既に出来ていた(そんなこと知っとかなアカンがな、というお叱りの声が無いことを願う)。

KSKは2018年に設立30週年を迎える。将来へ向かい、さらに様々な国に展開することを祈念し、また、その一端を担えるよう努めたい。

 

 

 

 

 

 

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