随筆石と竹 「お年玉」

 

もうこの歳になると人様からお年玉を頂くことはなく、もっぱらあげる一方であるが、今年の正月は嬉しい嬉しいお年玉をもらった。

2017年1月はライブを2回聴きにいった。一つ目はまだ年が明けて早々の5日、昨年メジャーデビューした辻本好美さんのライブ。今回はピアニストの砂川彩乃さんとのデュオで”アジグル”というユニットでの演奏であった。

辻本好美さんはNHK Worldの「BLENDS」という番組に出演したことから注目を集め、”美人すぎる尺八奏者”として一躍「時の人」となった。昨秋には女性ソロ尺八奏者として初めてメジャーデビューを果たし、ソニーMEから”Bamboo Flute Orchestra”というソロユニット名でCD『SHAKUHACHI』(すごいタイトル!)が発売された。前後してインターネットやマスコミ(テレビ、ラジオ、雑誌、新聞ほか)に数多く取り上げられ、その波は今なお続いている。

確かに、振袖姿の妙齢の女性が尺八を携え、外国のホットなナンバーを精度高く演奏する姿はインパクトがハンパない。それに加え、楽曲を決められたとおりに吹くだけではなく、実力派ピアノトリオ H ZETTRIO(エイチゼットリオ)とゴキゲンなアドリブワークを披露するなど、随所に豊かな才能を発揮している。

話をライブに戻すと、こちらの内容は二人が作曲したオリジナル曲をメインに、唱歌や民謡のアレンジ物などを組み合わせた聴きやすいプログラムで、好美さんの(BFOとは)違う一面が表れていた。二人ともふんわりとした空気を身に纏わせ、華やか、かつ、和やかな心落ち着くひと時を客席に届けてくれた。好美さんの尺八の音は人を元気にする音である。これからも多方面に活躍して、尺八の魅力を世界中に発信して欲しいと願わずにいられない。

同行した門人が、アトラクションのジャンケン大会で最後の2人に勝ち残ってアジグルのCDをゲットするという嬉しいサプライズもあり、ゴキゲンな気持ちいっぱいで会場を後にした。

 

それから十日ほど経った14日、今度はピアニストの天平さんとバリトンの吉武大地さんが中心になって展開されている”Rising Sun”という被災地チャリティコンサートへと足を運んだ。

2011年3月の東日本大震災のあと、ボランティアコンサートを開催したお二人は”継続して支援する”必要性を感じ、以来「Project Rising Sun」を結成され、現在まで続けておられるとのこと。お二人それぞれの活動と並行して意義ある行動を実践、継続され本当に頭が下がる思いである。

今回の大阪公演の出演者は天平さんと吉武大地さんの他に、ヴォーカルの上原ヨシュアさん、ケイリルさん、ヴァイオリンの辻本明日香さん、ギターの森口英次さん、キーボードの鎌野武馬さん、ベースの和田貴之さん、ドラムスの村上友さん、そして私がお目当てとする松村湧太さんであった。他のメンバーがそれぞれの専門種目でその凄技を聴かせてくださったのに対し、松村湧太さんは、ピアノ、声楽、尺八(それに怪しげなダンスも)と、マルチな才能を披露してくれた。

もちろん構成上ではあると思うが、吉武さんから歌を奪い取り、演奏中の天平さんの横に座ってピアノの連弾かと思いきやいつのまにかメインで弾きこなし、加えて要所要所では歌心ある尺八を吹いた。そのどれもが本職と言って差し支えないほどの高レベルで、客席のあちこちから驚嘆の声が上がっていた。歌、ピアノ、尺八、のそれぞれが個別に成立しているのではなく、その全てが融合して松村湧太というアーティストに止揚している、と言えば言い過ぎだろうか。まだ彼は20代半ば、夢はグラミー賞を獲ることだそうである。その実現を心から応援したい。

 

実は、辻本好美さんと松村湧太さんは高校生の頃、私のところへレッスンに通っていた。両名とも東京藝術大学尺八専攻へ無事現役合格を果たしたので、それ以降は殆ど顔を合わす機会がなく、私は関西から半分案じながら応援のエールを送っていた。

今回、おそらく辻本さんとは5年ぶり、松村さんとは8年ぶりにそのパフォーマンスに触れたことになるが、どちらも真っ直ぐにその才能を開花させながら音楽家として育っている姿を確認することが叶い安堵した。また、会場で私が顔を見せた時に、驚きながらもとても喜んでくれたことが何より嬉しかった。

これからも二人の活躍を陰ながら見守り、応援したい。大きなお年玉をくれた辻本好美さん、松村湧太さんありがとう!そして頑張れ!!

 

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

演奏会

前の記事

石の会第十四回独奏会
お知らせ

次の記事

随筆「石と竹」更新