子どもの練習時間について(ヴァイオリン)
ヴァイオリンを習っている子どもの練習時間について、今日は書いてみたいと思います。
先生によって色々なご意見はあるでしょうが、生徒を教えたり、自分の二人の子どもを育てたりしてきた中での、私の意見です。
結論から言って、小さい子どもに何時間も練習させるのには反対です。
子どもの本質は、置かれた環境の中で、遊びながら、嬉々として学ぶことだと思います。
このように学ぶ時、子どもは大人からは想像もできないような独創性で、多くのことを吸収します。
子どもが学べるように、刺激がいっぱいの良い環境を用意することは親として最も大切なことだと思います。
そして、他の勉強と同様、ヴァイオリンを弾けるようになるためには、ある程度の強制は必要です。
それは毎日規則正しく練習するようにさせることです。放っておいては子どもは練習しませんから(笑)。
でも、その後は、先生にお任せするのがいいのです。
そして、練習時間がどれぐらいが適切かなんですが、これは子どもがもうちょっとやりたい、というぐらいでやめるのがいいと思います。
4~6才なら、15分ぐらいが限界ではないでしょうか。
上手になって課題が増えて来たら、朝15分、午後15分、夕方15分と、可能であれば何度かに分けてやらせましょう。
朝は基礎的な練習。午後は今弾いている曲。夕方は前にやった好きな曲や、興味がある曲の予習など楽しい練習を。
これは、生徒をA先生のマスターコースに出した時に、先生が子どもに言って下さったことです。
ちなみに、先生は一回の練習時間を5分~10分とおっしゃっていました。
このあたり、個々の子どもの集中力によって加減して下さい。
逆に、このぐらいの練習でできるよう、子どもの興味や力に合わせた質と量の宿題を出すのが教師の腕の見せ所だと思います。
私の生徒にも、まれに、親が熱心で小さな子どもに何時間もの練習をさせてしまう人がいます。
たいていは、子どもの様子がおかしいので、その「虐待」に気がつきます。
幼稚園に塾に英語にヴァイオリンと子どもが「労働」させられている状況が時にみられます。子どもは親の期待に応えようと、それだけで必死です。
普通子どもは先生を敬慕してくれますが、このような子どもと心を通わせるのは少々困難で、時に先生を「見下し」たような態度に出ることがあります。逆に、無表情で、質問しても答えられないなどの場合もあります。
そして、技術的にいうと、このような子どもは、たいてい弓を握りしめたり、左手がすごく硬くなったりします。
これはSOSなのだと私は思っています。
ヴァイオリンは素晴らしい楽器である一方、とても繊細な楽器で、誰もが同じペースで上達するとか、やればやるほど上達するという類いのものではありません。
まして、子どもには負担が大きく、無理強いすれば、身体を壊したり、音楽が嫌いになるリスクを多くんでいます。
実際、音大を卒業してヴァイオリンをやめてしまう人がどれほど多いかご存知ですか?
身体を壊すか、精神を壊すかどちらかですが、続けている人の方が少ないのが現状です。
やめていった人、音楽が嫌いな人をたくさん知っています。
また、成功した人が幸せかどうか、という問題も、実は、残ります。
将来ヴァイオリンがその子の人生を楽しくするように、という思いでヴァイオリンを習わせているなら、長時間の練習はその可能性をつぶすでしょう。
もし、できればプロになってほしいと思っているなら、先生にまずそのことを相談しましょう。
「まだ下手なのに」「まだ小さいのに」、などと遠慮することは全くありません。
プロになるのに相応しい場所に子どもを置かないと、いくら家にこもってきつい練習をさせても、未来は開けません。
「うまくなったらなれる」という程、ヴァイオリンの世界は甘いものではないのです。
そして、相談したときの先生の応対で、その先生が本当に子どものことを考えておられるのか、そうではないのかの判定もできるのです。よく先生と話し合ってください。
また、プロの世界と言うのが、本当に親が思うような世界なのか、子どもに練習を強要する前に、調べることこそ、親しか子どもにしてやれないことだと思います。
このような理由で、長時間練習は、子どもが自らの探究心から望んで練習するときのみ許してもいいと思います。もちろん、それが過ぎて人間としての義務(規則正しい生活や、親の手伝いなど)を欠かすことがあれば、練習をやめさせなければならないのは言うまでもありません。