弾きたい曲を身体化する
大人から始めた皆さんには、きっと憧れの曲があると思います。
「今の苦しい練習をしていたら、いつかその曲が弾ける様になるかも」と思って
頑張るお気持ち、よくわかります。
でも、「いつか」と言わず、今すぐとりかかりませんか?
私は生徒に特別に憧れの曲がある場合、ほとんどの場合すぐに持ってこさせます。
他のことに費やす時間がもったいない!
今の時点でもやれることはたくさんあります。
そして、その曲が大好きだという心こそ、演奏の動機として最も自然なことだし、
聴く人にも伝わりやすいはず。
今日は読者の皆様が自習にてそれをされる場合のアドヴァイスを書いてみたいと
思います。
まず、その曲を細かくセクションに分けます。
音楽的に切れ目のあるところをなるべく細かく見つけて、印をつけて、
(1)、(2)など番号をつけておきます。
例えば、バッハの無伴奏パルティータ3番のプレリュードなら、私は10個の
セクションに分けました。
そして、一日に1セクションのみを練習します。
その時、いきなり楽譜を見て音を出しません。
次の手順で、しっかりと音を身体化させてから弾きます。
なお、難しい重音はメロディーとして聴こえる音単音のみで学習しましょう。
1)まず、膝を屈伸して手を叩き、全身でリズムをとりながら、ドレミで
歌います。
この手を叩くリズムは必ずしも楽譜上の拍でなくても、ゆっくりの曲なら
八分音符単位でもかまいません。
2)これができるようになったら、今度は右手で、どのようにそれを表現
するか考えます。
つまりボーイングを決めます。
そして、膝を屈伸してリズムをとりながら、右腕をアップダウンの通り
ぶらぶらと動かします。
「ぶらぶら」がポイントです。この時点で動きがかたいようなら、楽器を持った
ときにもうまくいきません。
3)次に、左手に落とし込みます。リズムをとって歌いながら、今度は左指を動かします。
テンポは落としてもかまいません。
この時、左手をピアノを弾く様に、甲を上にして、指の根元の関節(=基関節)が自分
で見られる様にしてやります。
基関節が軽く、ダンスする様に次々に動いているかをチェックしてください。
この段階で、ドレミと指の感覚をだいたい覚えてしまいます。
4)ここまでやったら、いよいよ弾きます。
楽器を持ったら力んでしまうという場合は、歌いながら弾きます。
5)音程がうまくとれないところは、再度楽器なしで、左手を動かしながら
指の形を唱えます。
この言い方は、次のような感じです。
・全:隣り合わせの指が開く形。
・半:隣り合わせの指がくっつく形。
・短:間に一本の指を挟んで、全+半(半+全)の形。
・長:間に一本の指を挟んで、全+全の形。
・四:間に二本の指を挟んで、半+全+全(順不同)の形。
・増:全より半音広い形、または長より半音広い形、または四より半音広い形。
・減:短より半音狭い形、四より半音狭い形
・同:同じ指
ここで、大切なことは、移弦がある場合でも、同じ弦に翻訳して考えることです。
例えば、G線の1stポジションのシから、E線の同じくファ#は、「全」になります。
D線ソから、A線シは、「短」になります。
これは指の形を表しているもので、楽典的な音の開きとは必ずしも一致しません。
こうやって、自分で自分をレッスンしていってください。
これはハヴァス式アプローチですが、とても効果がある練習法です。
いきなり楽器を持って力みながら悪戦苦闘するのではなく、たくさん歌って、
自分の中にしっかり曲を形成することがポイントです。
ハヴァス式ニューアプローチについて詳しくはこちら:
https://shaku8-ishikawa.com/violin/katohavas.html
石川ちすみ ヴァイオリン・ヴィオラ教室:
https://shaku8-ishikawa.com/violin/