本番の前に忘れること

「もっと音を出して」「もっとピアノで」「弓を少なく」「弓多く」「弓の場所は・・・」etc…
先生から受けたたくさんの注意が楽譜に書き込まれていることでしょう。
でも、本番の時にはすべてを忘れてください。

聴いている人を前にしてそういう指令を元に弾いてはいけません。

注意されたことを守って、と気をつけて弾いていると今度は逆のことを言われた、という経験ないですか?
皆、いつの間にか「音楽」より「先生に言われたことを守ること」に目的がすり替わってしまうのです。
先生は「音楽」を見ているから、今度は逆の注意をしなければならなくなります。

大切なのは音楽なのです。
指の形がどうとか、弓の幅はどうとか、弓の上げ下げ等々、それは弾けるようになるプロセスでしかありません。
それを弾いた時点のあなたと音楽の間でずれている点を指摘されたまでで、本番の日のあなたはその時のあなたとは別人のはずなのです。

だからといって、レッスンで色々言っていただいて、それを一つ一つ守って練習してみたことは決して無駄になりません。
それが磨かれたということなのです。

本番の前の日、書き込みを全部消した楽譜を前に、あなたが弾く音楽を生き生きと心の中で聴いてみましょう。
目の前にお客さんがいると思って、伝えてみましょう。