通せるけどちゃんと弾けていない

(メルマガ36号よりの引用)

よそから移ってきた人をレッスンして、困る場面の一つが、音は一応出ていて止まらずに弾いているけど、その曲になっていない、伝わらない、という演奏を聞かされたときです。
どこからどうコメントしようか・・・と、一瞬たじろぎます。
というのも、本人は真面目に練習してきているし、自分が弾けていないという問題意識も薄いからです。
そして、言われた通りにしようとはしますが、細かいニュアンスを伝えても、なかなか治りません。

昔はそれでも根気強く、細部を取り上げて、どこがどのようにちゃんと弾けていないかを細かく指摘したり、手本を見せて、「次回までに治してきてね」に、という対応をしていました。世の中の大多数の先生と同様の対応だと思います。しかし、このようにしても、治して来られる生徒はごく一部なんですね~。

理由は簡単です。「外から内へ」のアプローチには限界があるからです。
目の前の、そこそこ弾けているその生徒を、さらにワンランク上に上げてあげるにはどうしたらいいのか。
それは、ハヴァシュ先生の言うように、「内から外へ」のアプローチに変えなければなりません。
指導者としては、言うほど易しいことではありませんが、私はハヴァシュ式を学んで良かったと思うことの一つに、解決法があることがわかったことです。

「内から外へ」とは?
まず、リズミックパルス。
拍を手を叩きながら、そのフレーズをドレミで歌います。
この時点で落第する人が、40%ぐらいです。
ドレミがわからない人、どこで手を叩いていいのかわからない人etc…それぞれの問題点が明らかになります。
いずれもうまく弾けないことの深い原因となっています。
できない人は、このレベルをまず頑張りましょう。

次に、膝でパルスを取って歌いながら、右手のボーイングを弓なしで腕を動かす。(右手マイム)
これをやってもらうと、音にトラブルのある方ほど、全く腕が動かないか、的外れな動きになります。
ここで動き方を修正して、本人の実感として歌に合わせて右腕全体を楽しく動かせるまで練習してもらいます。

そして、膝でパルスを取りながら、左手の平を下に向けながら基関節を正しく動かすこと。(左手マイム)
これは、99%の生徒が、はじめ全くできません。
難しいのは重々承知ですが、これをやると左手は驚くほどスムーズになります。

終始、声を出してドレミで歌います。
声は悪くても気にする必要はありません。
ヴァイオリンが最後にはあなたの声の代わりに歌ってくれます。

まとめると、作曲家が何を書いているのかをきちんと把握していないと、楽譜の記号を見て、そのままかろうじて指先で弾いても曲にならない、ということです!
そして、それを身体に落とし込むのにも方法がある、ということです!

これは生徒自身にやらせるしかありません。先生がいくら説明したり弾いたりしても、生徒はいつまでも受け身です。レッスン室を出た時点で、生徒が少し上手くなっていて、家でそれを続けるともっと上手くなる方法をわかって帰る、そういうレッスンが可能となるのがハヴァシュ式だと思っています。