便利が招く弊害~メールやインターネットについて思うこと~

インターネットやメールがもたらした良いことはたくさんあります。

例えば、これまでは同じ境遇の人と繋がることが難しかった、難病の方等が情報交換できたり励まし合ったりが可能になることや、能力や志があるのに外で働くことが難しい状況の方がインターネットを通して仕事ができたりすることです。

公共サービスでも、図書館の本が家で検索できたり、税金の申告用紙がネットで作成できたり、保育所の空き状況が調べられたり、公開されている情報へのアクセスが格段に良くなっています。

しかし、一方で、メールやネットというコミュニケーションが登場したがために、人のコミュニケーション能力に問題が生じ来ているとも思います。

瞬時に相手に届き、都合のいい時に読んだり返信できたりできるメールは非常に「便利」でありますが、それに慣れ過ぎて、相手に気を使ったり、相手を慮ったりする心が失われてきているように思えてなりません。

相手の顔を見なくても言いたいことを言いきってしまえるメール、本当に相手の立場を想像できていますか。

せめて、電話であれば、自分が言ったことに対する相手の反応や空気がすぐに伝わってくるので、自分の言ったことの影響に少なからず責任が取れるのです。「あ、言い過ぎた」とか「あ、自分の言っていることはあつかましいのだな」とか、「あ、相手の状況を察し切れてなかったのだ」とか「あれ?相手は乗り気ではないな」とか。そして、すぐに軌道修正できます。

さらに一歩進んで、自分の用件で電話したけれど、「相手の様子がおかしいぞ」「元気がないな」などに気付いたことがきっかけで、思わぬ手助けができることもあるでしょう。

でも、メールは一切そういうことはなく、自分の言い分が受け入れられることを大前提としています。言ってみれば、とても傲慢な伝え方であると私は思っています。

また、メールの文字というのは、いくら言葉を並べても、非常に情報量が少ないのです。電話での声のトーンや、会って話すときの表情や空気など、データ化できない目に見えない部分はバカにできません。

よほど親しくて、メールを読んだだけで相手の表情や声が想像できるというのでもない限り、メールは非常に誤解を与えやすい通信手段だと思います。

そのような考えから、私は自分なりに、メールを利用するにあたってガイドラインを決めています。

それは、おおよそ、以下のようなことです。

1. 相手にお願いごとや謝罪をするときは決してメールを使わない。

  万一やむを得ずメールで第一報を伝えた場合は、後で必ず電話する。

2. ネガティブな内容や微妙なニュアンスを含むことはメールで伝えない。

3. 事務的で単純な内容以外、相手にメールで質問しない。

4. HPからの問い合わせなどインターネットを通じた出会いの場合でも、

  実際に出会ってからは電話で連絡を取り合う。

5. 相手の利便性のため適切と思われるときのみメールでやりとりする。

携帯電話の使用に関しても、持ってはいますが、よほど親しい人にしか番号を教えていません。

いつでも本人に、しかも外出時、仕事時と問わず繋がってしまう携帯電話を暴力的に感じてしまいます。

携帯がなければ、相手に電話するとき、時間は遅すぎないかとか、今頃何してるだろうかとか、気を使います。また、家族の方が電話に出たら、その方の家の雰囲気もわかりますし、失礼にならないよう、話し方にも気を付けますし、そこでコミュニケーションが生まれます。せめてそれぐらい人に気を使わないと、人間はどんどん利己的になり、ダメになる気がします。

もちろん、最近では一人暮らしの人など携帯電話しか持たない方もおられますし、ケースバイケースですが、便利さに呑まれて人として心が劣化していないか、一人ひとりが自分を律する必要はあるのではないでしょうか。

なお、私は携帯メールはやらないことに決めています。

(目上の方で携帯メールしかされない数名の方への返信を除く)

すぐに声でつながる電話を使用して、わざわざ文字を打ち込んで相手に送るというのが実にナンセンスに思います。ましてや、それにすぐに返信しなければと、あくせくする若者の姿には、暗澹たる危機感をも覚えます。

インターネットについてですが、巨大掲示板のようなところは、見ているだけで気分が悪くなるので、私は決して見ません。

匿名性を隠れ蓑に、人の悪口や罵詈雑言の嵐・・・人間の醜さの坩堝であるように思います。

良い意見や建設的議論もあるとの反論もあるかもしれませんが、言葉では何とでも言えます。顔や名前を出さずに美辞麗句を作文して何の意味があるのでしょうか。

人のホームページの掲示板であれこれと議論を持ちかける人も「人の家に勝手に落書きをしている」ようなものです。掲示板とはHP製作者が読者サービスのために設置しているものです。その「家」の人に敬意を表するため以外の動機で書くいかなる文章も、場違いであり、読む価値はありません。意見がある方はご自分のホームページでおっしゃれば良いのです。

ですので、掲示板の類は一切見ませんし、ウェブマスターへの表敬以外の動機で書きこむこともいたしません。

又私は、メールやネットだけでの交流の存在意義を信じていません。電子的な文字だけで友情や愛情が培われるとは思えないのです。もちろん、ネットがきっかけとなり実際のおつきあいや、私でいえば師弟関係に発展することはあるのですが、その出会いは、メールがきっかけとなっただけで、面と向かって会った時がスタートなのです。

おしなべて、今の時代、道具が多すぎて、無用に忙しいということもあるのではないでしょうか。

「酒は飲んでも呑まれるな」と言われますが、便利すぎる文明の利器も「使っても使われるな」の時代だと思います。

いくら「便利」になっても、人は人と助け合わないと生きてはいけません。

人とのコミュニケーションという最も大切なスキルを失ってしまったら、いくら物を持っていても、そこに幸福はないのです。

つたない長文にお付き合いいただきありがとうございました。