”ゾーンの入り方”室伏広治さんの本

私も読んでみました。ものすごく面白かったです!!

アスリートとは自分とは最も遠い人種だと思っていましたが、ヴァイオリンを思うように扱って良い音で芸術的に弾きたい、と努力することは、アスリートが鍛錬して良い記録を出したいということと共通するのだなと思いました。

そして、そのトレーニングに向かう真摯さや、緻密さは、素晴らしく、さすが金メダリストだと恐れをなしました。それと同時に、自分が信じて生徒に教えていることがあながち間違っていなかったというのもわかって、とても感動しました。

例えば、以下の論点はすべて私がハヴァシュ先生に教わったことに通じます。

・指先、手など末端ではなく、体幹や大きな筋肉を使う。

⇒ 羽ばたき、ポトンペラン

・何のための練習かをわかってやらないとだめ。練習に工夫をする。

⇒ そのまま!

・単調な反復練習はNG。脳が「反復練習だ」と思った瞬間に、

同じ部位の筋肉ばかりを使ってしまい、そこを怪我してしまう。

⇒ なるほど!納得。

・声を出しながら動くと、無言でやるのと全く動きの質が変わってくる(良くなる)。

⇒ 声とリズミックパルス

・道具を磨く。ハンマーの気持ちになる。

⇒ 楽器に名前をつける。楽器を生きたものとして扱う。

・ハンマーを持たずにハンマー投げの動きをする。

⇒ マイム

・空気を含んでいるというイメージで床に着地するエクササイズ。

無造作にやるのと違って鍛えられる

⇒ ネックとの接触感やハイポジションの感覚。

・自分の専門競技だけでなく色々な経験をする。

⇒ 絵を見たり、他の芸術に触れる

・煮詰まったら別の競技のレッスンを受けるなど、別のことに没頭し、

しばらくしてハンマー投げに戻る。

⇒ 疑念が湧いたら追求せず置いておく。曲を寝かせる期間を置く。

・他者のためにやったときに限界を超えられる

⇒ 音楽は与えるもの。練習の時でも誰かに、何かに向かって弾く。

簡単にまとめてしまいましたが、本の中では写真付きで、具体的なエクササイズも載っています。

自然の呼吸とはどういう状態かにも目を開かれました。

また、良い教師とはどういうものか、についても勉強になりました。

ちなみに、私達音楽家が、「脱力」呼ぶ状態は、本書で「集中」という書かれている概念に含まれている気がしました。そして、「筋肉を使う」「トレーニング効果が出る」という言葉は、「やりやすくなる」に置き換えられるといえます。そう思って読むとまた違う理解ができそうです。