ハヴァシュ先生の左手を触ったら・・・!!
私は、生徒の手をさすったり触ったりします。
意味なくそうしているのではありません。
左手は、あの美しいヴァイオリンの音を作る源です。
そこにすべての音があります。
生徒の左手の認識を変えてあげれば、音が変わります。
そして、生徒が自分でも、そうやってさすったり眺めたりしてほしいのです。
私も以前、カトー・ハヴァシュ先生からそんな風に触っていただいて、「とても良い手です。ここ(水かき)が柔らかいでしょ?」と言われても、半信半疑でした。
しかし、その時に触らせてもらった、カトー先生自身の左手の感触は衝撃的でした。
なんというか、綿(わた)の中に指が生えているように、全方向に動くんです。
基関節(指先から数えて三番目の、手の平との境目の関節)が、ゆるゆる(!)なんです。
そんな手には、とても自分はなれないと思いましたが、それでも最近、自分の左手が微妙に変わってきたようです。
なぜそのように変わってきたかというと、理由はただ一つです。
それは、生徒と一緒に、または自分の普段の練習で、歌ってマイムする(楽器を持たずにエアーで指を動かす)時に、イメージを送り続けていることです。
そして、弾くよりマイムしている時間が長いぐらいだからです。
内的なパルス、音楽的イメージを開発すること、そしてそれを左の期関節へ送り続けることこそが、手の形をも変えます。
正く弾けるかを心配しながら指先で楽器にしがみつくのではなく、イメージする力と左手を連動させること、誰にでもこういう訓練ができるように考えつくされたのが「ハヴァシュ式ニューアプローチ」です。
左手を眼の前に扇形に広げて手を見る、音楽で心が満たされ、耳の中に音が聞こえた時、左手は無限の期待感で満たされつつ、ゆっくりと動き始めます。このようなゆるみとしなやかさ、これこそがヴァイオリンの左手に必要なことです。
カトー先生は、半世紀以上も、そうして音幅のイメージを基関節へ送り続け、左手に向かって歌い、そのような手になられたのでしょう。