スタジオ録音で
クリスマスの日は、箏・三絃奏者のYさんから依頼を受けて、「春の海」のCD録音をしていました。(発売前に詳しくご案内しますので、よろしくお願いします!)
しかし!!演奏はかなり苦戦しました。
薄暗く殺風景なスタジオ、演奏を楽しみにしているお客さんは誰もおらず、多くのスタッフが立ち働く中での演奏。また、依頼者が演奏家人生を賭けたCDであるという重責。限られた時間(というか、なるべく短い時間)の中でOKを出さないといけないというプレッシャー等々の条件は確かにありました。
とはいえ、音が出たら大丈夫と思っていましたが、共演者との間に高い衝立が設置されて、相手の気配が全然感じられないのは想定外でした。衝立は、マイクが隣の楽器の響きを拾ってしまわないために必要だそうで、仕方ありません。
自分の音だけに集中していると、どんどん「ミスしたくない」という、最もこわばりを招く思考回路に陥ります。そしてこわばってくると、自分の音が響いていない気がして、よけいにこわばるという悪循環。そして、音程をはずしたり、音が抜けた時の精神的ダメージも極大になっていきます。そして、気がついたらハヴァシュ式ではなく、昔の戦闘態勢な奏法に戻っている自分を発見しました。
それでもなんとか音楽に集中して、やっといい感じで弾けたぞ~と思ったら、別の要因にてボツということもあったり。
また、録ったものを試しに聴かせてもらったら、それぞれが良くてもテンポ感がずれずれになっている箇所があるという、衝立を隔てた演奏ならではの現象も!
結局、音楽的にベターな指遣いを捨てて、機動力のある指遣いに直し、お箏とずれないことを最優先にしたテイクを最後に、終了しました。
収録中は、「何回でもやり直します!」と元気に言っていたけれど、スタジオを出た途端、どっと疲れが襲ってきて、次の日まであちこち痛くて大変でした
様々な条件の中、一回一回命がけのプロの仕事のしんどさを久々に味わいました。
生徒が入門するとき、昔の先生は、プロになりたいのかどうか、まず聞いてましたよね。
これ必要かも、と頭を去来する今日この頃です。
それと余談ですが、スタジオのエンジニアの方は、本当に大変なお仕事だなあと思いました。人の演奏した同じ曲を何度も何度も何度も聞かねばならないだけで相当疲れるだろうし、後でそれと首っ引きになって繋げたり修正したりする作業は、考えただけで気が遠くなりそうです。
どのように仕上がってくるのか、怖くもあり、楽しみでもあります。
大変勉強になりました。