鈴木鎮一先生「愛に生きる」

スズキメソッドの創始者、鈴木鎮一先生の著書「愛に生きる」。

私がヴァイオリンの道を志した頃に出会った本ですが、何度読んでも、心が洗われるような、すばらしい本です。

久方ぶりに読んでいます。

愛に生きる 才能は生まれつきではない (講談社現代新書 86)/鈴木 鎮一

¥798

Amazon.co.jp

その中で、今日目に留まった言葉がありました。

「不当の利のあるところには、ひとは知らずしてなんらかの禍根をつくる」

これは、鈴木先生が留学された頃のドイツは、第一次世界大戦後で、恐ろしいインフレであり、それに便乗して設けようという悪質な干渉が多くあった時代で、やがてヒトラーの登場や第二次世界大戦へと繋がっていくのでした。

学生であった鈴木先生にすら、「五階建ての大きなビルが売りに出ている。一万円も出せば手に入りますがどうです」などという話がもちこまれることもあったということですが、先生は「わたしは、金儲けにきているのではない」と断られたそうです。

それでも、金持ちの婦人に頼まれて名器グァルネリウスを安く手に入れるということがあったそうですが、「人は運が良かったとうらやむかもしれないが、決していいことではなかった」と振り返られて、続いて、上記の言葉が書かれていました。

今の日本も、多くの人が「不当の利」をむさぼり、儲け主義、経済至上主義に傾いた結果、そのしわよせの総決算になっていないでしょうか。

最近、連続している長距離バスの事故などを見ていても、安いツアー料金に喜んでいてはいけないことがわかります。

不当に安いものを「得をした」と喜ばず、そのしわよせがどこに来るのか、もっと想像力が必要だと思います。

「不当の利を決してむさぼらない」、そして、「足るを知る」、ことが、これからは本当に大切だと思います。