「縮小社会への道~原発も経済成長もいらない幸福な社会を目指して」

縮小社会への道―原発も経済成長もいらない幸福な社会を目指して (B&Tブックス)/日刊工業新聞社

毎日新聞の書評欄で知り、今夢中で読んでいます。

京大の「縮小社会研究会」の先生方の共著です。

私が漠然と思っていたことを、ちゃんとした研究として社会に訴えておられることに驚き、希望を感じました。

やはり、世界がこのまま「成長路線」「成果主義」を突き進めば、戦争や自然災害など人類破滅の恐ろしい未来が待っているそうです。

それを避けるには、今思い切って舵を切り、GNPや消費を縮小させていくことが必要であると書いてあります。

しかも、それは決して不幸になるということではなく、むしろ幸福を感じられるはずだという結論には拍手を送りたいです。

先進国と発展途上国の格差についての深い視点や、すでに縮小社会へ向けての舵をとりつつある外国の例、自動車をやめなくても小型低速化すれば維持できるとの提案など、多角的な視点で書かれていて感心します。

また「経済至上主義」的な方からありがちな反論への説得力のある反論に胸がすく気持ちでした。

素晴らしいと思った箇所を引用させていただきます。

「東日本大震災で何もかも失い、学校の体育館で避難生活をしていた人たちがテレビ局の取材に答えて、「少なくても分け合えば足りるが、多くても取り合えば足りない」と語っていた。(中略)

分け合いは多数の人間が少ない物資で平等に暮らす術である。それ以上に、人の温かみを知り、人間同士の絆を強め、気持ちを安心させてもくれる。

分け合いの気持ちは物資が少ないことを皆が知っているからこそ生じる。ところが、現在は『頑張れば人を損なわずに好きなだけ手に入る』ことを装った社会であって、何をどれだけ手に入れるかはすべて個人の才覚、努力次第だと絶えず吹き込まれている。(中略)

その背景には、大量生産、生産力向上、経済成長主義があり、消費は美徳倹約は悪徳という観念がある。こうして、人は足ることも分け合いも忘れて自分だけはもっと欲しいという気持ちに捉われる。

しかし実際には資源の制約があるので、奪い合いとなり、格差が広がり、結局は人が幸福を感ずる機会を少なくしている。(中略)

社会の縮小は、次のより高度な、文明社会を造るためにも必要なのである。」