【追悼】KHインタビュー(3)〜あがりの原因と対処〜

 

 

 

KH: 要するに、人々はもう、どうしても上手に弾きたくて、音楽を忘れてしまうのです。絶対に音を忘れないように、間違わないようにと心配します。だから私の教育は、音楽から始めます。歌とリズミックパルス(活き活きした脈動)です。そして、リズミックパルス、と私が言う時は、拍のことを言っているのではなく、パルス(脈)なんです。それぞれのパルスは次のパルスへと繋がり、そしてまた次へとつながる。作曲家ごとに独自のリズムがある。すべての詩人に独自の言葉があるようにね。歌うときは、聞こえたように歌わないといけません。だから、まず耳を訓練します。そしていつの時代に書かれたかということ。生徒に作曲家の人生について想像させるのが好きです。チョコレートケーキは好きだったかな?結婚はした?どんな人だったか?ってね。いくつのソナタを書いたかというようなことではなくてね。私達の仕事は作曲家の音楽を伝えることであって、作曲家を弾くというのではないのです。

 

そして、ヴェンゲーロフのように、まさに音楽を弾いて、人々の心に飛び込んで行けるというヒーローもいるわ。これが私の目標であり、教えなのよ。私のレッスンでは、時には2時間かけることもあります、もう今は2時間じゃなくて1時間しかしていないけれど。そうして生徒と勉強するときは、ヴァイオリンに触らせません。というのも、皆恥ずかしがりで奥ゆかしくて、声を使わないからなの。どうやって与えるか、どうやってコミュニケーションするかを学ばないとだめなの。人々には作曲家をそのスタイルどおりに歌って、楽器なしでマイムすることを教えているの。そう、身体の中のことなのよ。大切なのは、楽器は運搬人であり、通信装置にすぎないということ。だから、左手に向かって歌って、音幅をバレーリーナのようにマイムさせるの。すべての音幅は次へと繋がり、そしてまた次の音へと繋がっていくのであって、ギュッと止めて揺らして良いヴィブラートをかけようというのと違うのよ。私は皆に、「どうが間違ってください、間違ったらあなたのことが大好きになるわ。」とお願いします。これが左手です。その後、もちろん弓もあります。それは内側から外へと流れるのであって、ただ弓を握って上下に動かすというのと違います。そして全ては横方向の動きであり、ずっとずっとずっと動き続けるのです。そういう風にして次に来るもの来るものに没頭するなら、単純に、あがっている暇はなくなるのです。

 

あがりを取り除くことはできません、皆あるのよ、ただそんな暇はないの。だって次に来るものを期待し続けるのだから、立ち止まって「私はうまいだろうか、出来るだろうか、覚えているかな、間違わないかな」などと考える暇はないのです。

これが私についての、かいつまんだお話です。

 

===

 

【連載バックナンバー】

「あがりを乗り越えて」カトー・ハヴァシュインタビュー(1)

KHインタビュー(2)〜天にも登るような発見!ニューアプローチの誕生〜

 

 

【出典】音声でお聴きになれます。

http://www.beyondstagefright.com/kato-havas/

 

(c) 2018 Charlotte Tomlinson. All Rights Reserved

Japanese translation(c)Chisumi Ishikawa

 

 

続きはまた明日!