【追悼】KHインタビュー(5)〜ハイフェッツの逸話〜

 

 

CT: それと、ハイフェッツはいかがでしたか?彼の演奏も聴いたそうですが。彼はどうやってあがりを克服したのでしょうか。

 

KH: それはわかりません。ただ、私が知っていることはね・・ある逸話をお聞きになりますか?

 

CT: ぜひ!

 

KH: ハイフェッツを聴いて私は怖いと思ったわ。一体どうやったらあんな風に出来るのかわからないから。感動させたのではなく、怖がらせたの。もちろん素晴らしくて、王様だった。

でもね、彼のアシスタントの女性が私のアメリカのワークショップに来たの。私は彼女をイギリスに招いて、私の12回レッスンコースを受けさせたわ。そしたら彼女がイギリスにいる間、ハイフェッツが毎日彼女に電話してきたの。自分のアシスタントが他人のレッスンを受けるのが耐えられなかったのね。彼女が言うには、ハイフェッツは毎朝起きたら、生徒のレッスンをする前に練習をしたそうよ。とっても不幸な人だったの。ヴァイオリンの犠牲者よ。でも、王者であることには間違いないけれどね。

 

CT: 彼は秘めた精神的問題をかかえていたのかもしれませんね・・・。

 

KH: そうね、そうでしょうとも。まず、それに間違いないと思うわ。60歳で弾くのを止めてしまったのよ。彼に痛みや疼きがあったことを確信しているわ。だから彼は人を感動させなかった。彼は崇拝を得たけれど心は得られなかったのよ。

 

CT: それは、まったく対照的ですね。

 

KH: そうね・・・ただ、これだけは否定できない、彼は王者だった。誰もその座を奪うことはできないわ。

 

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【過去記事】

「あがりを超えて」カトー・ハヴァシュインタビュー(1)

KHインタビュー(2)〜ニューアプローチの誕生〜

KHインタビュー(3)〜あがりの原因と対処〜

KHインタビュー(4)〜ホロヴィッツ、クライスラーの思い出〜

 

【出典】音声でお聴きになれます。

http://www.beyondstagefright.com/kato-havas/

 

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Japanese translation(c)Chisumi Ishikawa