ポジション移動とヴィブラートは同じ技術
カトー・ハヴァス氏の 書籍「『あがり』を克服する」とA new approach to violin playing (ヴァイオリン奏法への新しいアプローチ)に出会ってから、私のヴァイオリンの技術に革命が起きました。
日々、完成に向かって練習中です。
継ぎはぎだらけだった技術が、この「新しいアプローチ」でいくと、統合された技術に変化してきたのは驚きです。
この本は、神童と言われたコンサートヴァイオリニストの著者が、ある時ジプシーの少年が、レッスンなど受けたこともないのに、見事な音色と技術で楽器を弾くのに衝撃を受け、のちに子育てのため演奏活動から退いた時に、奏法について徹底的に研究された成果であり、多くの生徒をヴァイオリンによる身体的障害から助けた実績のあるメソッドです。
今日取り上げるのは、ヴィブラート、ポジション移動、音程は同じ技術を使えば、特別な練習せずとも衝動的にできてしまう、というところからです。
もちろん、いきなりできないし、初心者はメンタル含めた練習は必要ですが、いわゆる筋肉トレーニングのような、できないのを無理矢理やるような「練習」は不要です。
ポイントは、左手の親指の使い方です。そして、左手の基関節(指の根元の関節)の使い方にあります。
ハヴァス式では、人差し指の先と親指の第一関節の間で丸を作って、その丸の中にネックをそっと落とし込むようにします。
そして、この丸を開けたり閉じたりする動きで、弦に滑り込むのです。
ネックは親指の第一関節ではなく第二関節(根元のところ)に当たります。
指は弦を上から下へ押さえるのではなく、基関節からネック方向に大きく反らせて、目指す音のところまで前へスライドさせるようにして取ります。こうすると、余分なこわばりがなくなるのです。基関節の重みの反作用として指先が伸びて行く感じになるので、指先はゆるゆるなままです。音程の修正やヴィブラートが自然に出来る上に、握りしめないので音色も良くなります。
この取り方をしていると、ポジション移動は、基関節が用意して、指先が目指すところに飛んで行ったと思ったら、もう移動は終わっている感じになります。
その前提として、前にも記事にしましたが、1stから3rdまでの音と指の場所が完全に頭に入っていることが大切です。
これさえわかっていれば、移動は瞬間です。
これまで親指の第一関節でネックを支えていた頃は、ポジション移動の時ネックが親指の根元まで落ちてしまいそうで、それを防止するために微妙に手を捻ったり余分なコントロールをしていた気がします。その必要もなくなります。
あと、錯覚という障害もあります。
指板を横からよく見てみましょう。
上からネックの根元まで、わずかに20センチあまり、ピアノのオクターブ程の幅しかありません。ポジション移動が怖いときは、なんかものすごく長距離のように感じてしまっているものですが、事実は違います。この認識も大切です。
本の中に、「ポジション移動は全く出来ないか、簡単に出来るかどちらかである」と書かれていました。生徒を見ていて全くその通りに思います。
ちなみに、自分自身は全く出来ない方の生徒でした
ひたすら根性で練習していました。(セブシックOp.8どんだけやったことでしょう・・本がボロボロです。)
この左手の使い方とポジション移動ができたら、ヴィブラートは同じ方向の揺らぎなので、勝手にできているはずです。
レッスン中に、「そのことが起った」と生徒に思わせるレッスンをしなければならない、とハヴァス氏も述べています。その通りですね。
生徒達も楽々できるように、これから共に勉強していきましょう。