残像の効果〜スムーズな左手の動きへ

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今日は、ハヴァシュ式の上級編です。
これまでにメルマガで書いてきた、基本エクササイズの必要性や、リズミックパルスの効果、マイムなどを実践されている前提での内容です。

手の裏マイムを指導していて、どうしても、目が楽譜に釘付けになる生徒が多いですが、これではあまり意味がありません。
暗譜が不安なのでしょうか。いえいえ、マイムするときは、覚えられる程度のごく短い単位でやります。
また、人前であがらずに弾くには、どのみち最終的に暗譜していなければなりません。
(楽譜を安心のために置いておくかどうかを別として。)
それならば、初期の段階で覚えた方が、良い奏法やフィンガリングに早く辿りつけます。
これまで習慣的に、楽譜を凝視する眼の筋肉経由で指を動かしていたのかもしれません。
それをやめるのはなかなか勇気がいるようで、生徒には繰り返し「手を見て!」と言い続けます。

あがらずに弾くために、ハヴァシュ先生が提唱しているのは、左手の幅が織りなす形で暗譜しておくこと。
そして、その方法とは:

1)ドレミで歌えること。(早いフレーズもパルスに合わせてスラスラ歌えること。)

2)左手基関節の次の音へ次の音へと繋がっていく準備で覚える。

この(2)の練習法が、手の裏を見ながらスローモーションのようにゆっくりとするマイムです。
つまり歌いながら、次々と指を、基関節から動かしていきます。
そして、動かすだけではなく、指と指との幅が、全音か半音か、3度なら、短三度か、長三度かの開き方の区別をはっきりと、映像で目に焼き付けます。
ここがポイントです。指と指の間がパーッと開いている映像、またはくっついている映像で目に焼き付けるのです。

ヴァイオリン、ヴィオラは、駆動体である手の裏全体や親指、基関節が楽器の下に隠れていて、演奏時に見ることができません。
実際に見えるのは指先だけです。
これが、「目の錯覚」を生み、本来は動きの結果でしかない「指先」をコントロールしようと身体が躍起になるのが、こわばりや力みの原因となります。
人間は、目で見たところを直接なんとかしようとするものですから。
こういうことからも、演奏しているときはなるべく指板の上の指を見ないことです。
代わりに、楽器を横において、手の裏を見ることにたくさんの時間を割いて下さい。
歌と手の形をリンクさせて下さい。
実際に弾く時は、この手の裏の映像を頼りに弾きます。

皆さんも自分が最も苦手なフレーズで試してみてください。
どうでしょう?
いかにスムーズに弾けることか!
さしたる努力をしなくても、音程がバシバシとハマっていく体験、読者の皆様もされていますでしょうか?
練習してもしても弾けなかった箇所が、あっという間に弾ける体験、していただいていますか?
そのように心から願います。

なぜ、こうなるのか?、長い間考えていましたが、一つの卑近な例を発見したので、今回はじめて書いてみます。

私事ですが、うちの家はマンションで、4人家族があちこちの床に布団を敷いて寝ています。
家族が自分より先に寝てしまった場合、真っ暗な部屋で、奥の方の自分の布団に、家族の足を踏んだり、物につまづいたりすることなく辿り着つかなければなりません。
さて、皆さんならどうされますか?
電気をつけてしまうと、寝ている家族の安眠を妨害します。
私は、電気をパチっと一瞬だけ点けます。本当に一瞬です。1秒以内。これでOKです。
そして、電気をつけた時に見える、家族の寝ている姿勢や、障害物の場所などを目に焼き付けます。
その残像さえあれば、意外なことに、すんなりつまづくことなく、布団まで辿り着くことができます。

これは手の裏マイムの原理と同じだと思います!

皆さんも一度試してみてください。
真っ暗な中を手探りで歩く状態、これが「弾けない」「難しい」という恐怖にかられながら弾いていて、いつ躓いてもおかしくない状態。
電気をつけた映像というガイドがあって歩いているのが、正しく動きを理解して弾けている状態です。

ご参考になりましたら幸いです。