移弦は遠隔操作が秘訣

ヴァイオリンの達人になるには、脱力が必須で、身体のどの部分も踏ん張ってはいけません。

じゃあ、どうやって楽器を支えたり、動きを作るのか?

答えは、シーソーのようなバランスでやる、です。

以下、来月発売予定の拙訳書「ハヴァシュ・バイオリン奏法」(ヤマハミュージックメディア刊)からの引用です。

「シーソーの片側に座った時、シーソーを押し下げているのは私たちの体重だけであり、何の力を入れなくても、一方を下げ、もう一方を押し上げている。完璧にバランスをとろうとすると、両方にまったく同じ重さが必要になる。もし、重さが等しくなければ、シーソーの形はそのバランスに従って変化する」

そう、重さを移動させる、重さのバランスを変えることで動くのです。
このシーソーのバランスを身体のあちこちに作って行くのだとハヴァシュ先生は書いています。

例えば、先日ハヴァシュ式集中レッスンに来られた方の右腕の改善の話です。
ハヴァシュ式のシュイシュワー(Swing Swang)のワークをしてみると、形はスイングされているのですが、実際は、重さの移動ではなく、手を浮かしながらその動きをされているので、ぎこちなく、応用がきかない状態でした。

この方に限らず、よくある症状です。

つまり、浮かしながら、音を出すに押さえる、という矛盾した二つのことを人為的にしなければいけない状態で、当然音はギーギー言ったり、シューシュー言ったりと不安定になります。
弾きにくいことでもあります。

これを、「私が手で支えるから、腕をダラッとさせてもっと重くして!力を重力に任せて解放して!重さの移動で動いて!」とお伝えして練習したところ、腕を力で浮かさずに振ることができ、音が劇的に改善されました。

さて、タイトルの「遠隔操作」ですが、このシーソーの板が長いほど、つまり、重りと重りの間が遠いほど、動きは簡単で軽くなるのです。

例えば、バスに乗ったとして、一番後ろの席に座ったことありますか?
後ろの席は、エンジンのついてる前とすごく離れているので、ちょっとの動きがすごく大げさになって伝わって来て、ボンボン跳ねてしまいますよね。
これです。

移弦を、動かしたい部分の近いところ、つまり指や手でやろうとするのは間違いで、もっと遠いところから遠隔操作します。そう、肩でやります。
そうすると、ほんの少しの、ほとんどわからないぐらいの小さい動きで事足ります。
指や手首はプランプランに脱力した状態に保っておくことによって、受動的に揺れることでしょうが、決して自発的にグネグネしてはいけません。
そして、「肩」の場所について、誤解が多いです。
ここでいう肩は、よく肩こり体操などで上げたり下げたりする上の部分ではなく、腕が鎖骨と鎖骨に繋がっている筋肉のことです。

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