藤間由香利先生(神奈川県)のレッスンから
今回は、教師養成コースを受講されているヴァイオリン講師の藤間由香利先生とのオンラインレッスンでのやりとりをご紹介します。

具体的な技術指導で生徒の悩みが即座に解決
藤間先生は現在、大人の生徒さんにシュラディックの練習曲を指導されています。レッスンでは「増2度の音程を左手で測って取る時、どう言葉で伝えたらいいのか分からなくて困っていた」という具体的な質問をいただきました。
私からは「それは、決して『漠然と大きい幅』というのではなく、むしろポジション移動として考える」「一回半音行ってから全音を測るという感じ。これまでのハヴァシュ式の音程の測り方と同じ」とアドバイスしました。藤間先生は「なるほど!そうですね」とすぐに理解され、実際に生徒さんに試していただくことになりました。
スピッカート指導法で画期的な発見
特に印象的だったのは、スピッカートの指導法についてのやり取りです。藤間先生は「真ん中でスピッカートをする時の右手の感じ」について悩まれていました。
私が「その場でバウンドしてポンポンポン、手毬みたいにやって、弓の跳ねたがり方を体感」と実演すると、藤間さんは「すごくスッキリ!なんかできそうな感じします」と明るい声で応答されました。
さらに興味深かったのは、アップの速い弓で弓を浮かすテクニックを実際に親子で習っている生徒さんに試された結果の報告でした。
最初は子供の生徒さんには上手く伝わらなかったのですが、その後、見学されていたお母様のレッスンのターンになったとき、「それって、最終的に手首がこういう風な状態になるんですか?」と鋭い質問があり、お母さんができるようになってしまった、というエピソードを聞かせてくださいました。
「親子で習うメリットですね」と私がコメントすると、藤間先生も「すごい面白いエピソードでした」と楽しそうに話してくださいました。
弓の平行性への固定概念が変わった瞬間
これまで「まっすぐ弾きなさい」と指導していた藤間さんでしたが、子供さんのレッスンをする中で、さらに大きな気づきを得られました。
「(ハヴァシュ式のボーイングを)自分が教わってやっていた時は、すごいやりやすいと思ったし、変な音も出ないから、それ以上何も気にしたことなかった。でも生徒や子供にやらせてると、実際弓がちょっと曲がってるなって思って。だけど別に変な音も出てないし、多分動き的には合ってるから…私はいつも『まっすぐ弾きなさい』って言った言葉は、それによってなんか固くなってたんじゃないか?」
この気づきに対して、私は「素晴らしい気づきです。おっしゃる通り、弓は常に並行である必要はありません。それよりも、身体の自然なスウィングを使って、楽に弾くことのメリットの方が大きい。」とお答えしました。
実際、多くの生徒さんが「まっすぐに弾け」という結果だけを突きつけられて注意され、かえって固くなったり、迷宮にはまって挫折してしまうものです。
重音の指導法で革命的な変化
ベラチーニのソナタに出てくる重音指導法では、従来の指導法から大きく発想を転換していただきました。
私が「移弦の意識を排除してあげたら、これだけ簡単になる」と説明し、実践してもらいました。
藤間先生は「すっごい今面白かったです」「すっごく気持ちよくハマりました」と感動してくださいました。
「今度金曜日にレッスンなんですよ、その方の」と、早速実践への意欲を示してくださったのも印象的でした。
ビブラートへの新しい視点
最後に、ビブラートの指導についても深い話し合いができました。藤間先生は「私はこのハヴァシュ式でギヴィングハンドなら、先生に1弦とか2弦とか3弦で親指の位置が変わっていいんだよっていう風に言われたあたりからビブラートがすごく楽になったんですよ」と体験を語ってくださいました。
そして「でも私、その感覚でまだ生徒に教えてないんですよ。前の感覚で教えちゃってるから」と正直に打ち明けてくださったのが印象的でした。
教師としての成長への気づき
レッスンの最後に、藤間先生から心に残る言葉をいただきました。
「私は。『大人からでも始められますよ』ってことが私は証明できないんですよ。でも先生は、もう先生自身がもう証明になってるじゃないですか。私もすごくそこに感動というか、素晴らしいなってすごく思ってます」
この言葉を受けて、私も自分では気づかなかった強みを再確認できました。
同時に、「小さい時から私はやってないから、ちっちゃい子を見た時にたどたどしく弾く状態を経験してない」という話から、お互いの異なる経験が教師としての異なる強みになることを確認し合えました。
このようなやり取りを通じて、受講生の皆さんが単なる技術習得を超えて、教師としての視点や考え方そのものを見直していく姿を見ることができるのは、この養成コースを続けている大きな喜びの一つです。
実際の指導現場で直面する具体的な課題を、一緒に解決していく過程でこそ、本当の成長が生まれるのだと改めて感じています。
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