私の音楽履歴書〈幼少の頃〉

これまで私の詳しい音楽歴を公開したことはありませんでしたが、思うところあって、少しずつ書いてみようと思います。

物心ついたときから音楽は好きだったようで、アナログのレコードプレイヤーの前に長時間座って童謡などを聴いていた記憶があります。3歳ぐらいだと思います。歌うときの音程がしっかりしているので、音楽の才能があるかもしれないと、親は思ったそうです。

幼稚園に入って、きっかけは忘れましたが、「ピアノを習いたい」とせがみました。当時オルガンまたはピアノを習わせるのが流行った時代だそうです。

両親は、ピアノは楽器も高価であり、場所もとるので、いきなり買うのには二の足を踏み、まず小さいオルガンを買ってくれました。そして、ピアノの先生のところへ通い始めました。

その頃のレッスンの記憶は殆どありませんが、幼稚園の先生が弾いていた「たき火」の楽譜をもらって帰り、それを自分で弾いてみたのが嬉しくてたまりませんでした。

順調に上達し、小さなオルガンの音域では鍵盤が足りなくなったので、いよいよピアノを買ってもらいました。

茶色い大きな、ピカピカのピアノが家に来たときの喜びは今でも覚えています。

小学校時代は、メトードローズ、バイエル、ブルグミュラー、ツェルニー、ソナチネなど、ピアノを楽しんで毎日弾いていました。ただただ無邪気に楽しく弾いていました。強制されたこともありませんし、叱られたり、緊張した記憶もなく、ひたすら音楽を楽しんでいました。

発表会も数回出させてもらいました。

内向的な子どもだったので、音楽の世界が自由に羽ばたける心の癒しでした。

ピアノのレコードを聴いていて、感動して号泣してしまい、親を驚かせたこともありました。

小学校3,4年生は家族でアメリカ、ニューハンプシャー州に住みましたが、その時に中国人のチェン先生に習ったことは大きなカルチャーショックでした。

それまで日本で習っていた先生と何かが違うと感じました。

バッハやバルトークなど、当時の私には新鮮で刺激的なレパートリーをたくさん教えていただき、先生宅で開かれるミニ発表会など、音楽的に豊かな経験をたくさんさせてもらいました。

蛇足ですが、その頃の練習について、思い出があります。

当時住んでいたアメリカの家は父の勤める大学の寮で、もちろんピアノもありません。そこで、私がピアノを習うにあたり、寮の敷地にある集会所にあるアップライトのピアノを、集会所を使っていない夜間に特別に弾かせてもらえることになりました。

ところが、親は私のピアノの練習に付き添うという考えはない、放任主義でしたので、その集会所に一人で行く夜道の怖かったこと・・・。それでも、ピアノが弾きたくて、真っ暗な夜道を走るように早足で歩き、後ろに人がいないか気にしながら集会所の鍵を開け、電気をつけて中に入り、怖さを払拭するようにバッハを弾き、音楽の中に没頭するように自分をコントロールしていました。今でもその曲と共に良く覚えています。

当時の日記に、「将来の夢は、できることなら音楽家になりたい。」と書いてあるのを、結婚前に荷物の整理をしていて発見しました。

そのように思っていたことは記憶になかったので、感慨深かったです。

ヴァイオリンとの最初の出会いは、アメリカから帰ってすぐの小学校4年生頃だったと思います。

仲の良い友達がヴァイオリンを習っていたのです。

私は彼女が羨ましくて仕方がなく、親に「習わせてほしい」と頼みました。

しかし、親はピアノと二つも習い事をさせるという気持ちはなかったようで、その話はうやむやになってしまいました。

アメリカから帰ってから習ったピアノの先生は、今までなんとなく弾いてきたピアノを、きちんとしたテクニックへと整理・昇華させるレッスンをしてくださいました。「ピアノのおけいこ」というテレビにも出演していた先生とのことで、優秀な方だったのだと思います。楽典やソルフェージュも教えてくださり、私に音大に入ることを勧めてもくださいました。

後にヴァイオリンで音楽の道に進んでから、この先生(富永先生とおっしゃいます)は今どうされているのかな、とインターネットで探したりしましたが、わかりません。確か広島ご出身だったと思います。

私が高校に入って、ピアノをやめるとお電話したとき、「(楽器で)歌える人は滅多にいないんだよ。やめてはもったいないよ。」と言ってくださいました。

自分が音楽に適正があるなんて思ってもみなかったことだったので、先生が明言してくださって、とてもびっくりして、その後も心に残りました。

それだけ熱心に愛情をかけてくださったのに、礼も尽くさず、電話一本ですっぱりとやめてしまって、今となれば先生の気持ちを察すると、申し訳なく、心がうずきます。

中学時代、ロックミュージックとの衝撃的な出会いがありました。

(次回〈ロックへの傾倒〉
へ続く)

※一体いつになったらヴァイオリンを習う話になるのだろうと皆様お思いでしょうが、もう少しお付き合いください。