随筆石と竹「尺八の日」

 

1月8日は『尺八の日』である。

 

えっ、そうなの!!。

知らなんだ・・・・・。

いつそんな日が出来たんや???。

 

ごもっとも、ごもっとも。

実際にはそのような日はまだない。

でも私は決めたのである。1月8日を尺八の日にしようと。

 

実は、1月8日は私の誕生日である(バースデイプレゼントは継続して受付中です、念のため)。今年のその日には、普段ほとんど参加(?)していないにもかかわらず、フェイスブックにたくさんのハッピーバースデイのメッセージを頂戴した。ありがたいかぎりである。そしてその中のひとつに「今年から『囲碁の日』というものが出来たそうです(1月5日)。『尺八の日』はあっただろうかとネット検索してみましたが、見つけられませんでした。石川さんのお力で、ぜひ全世界共通の尺八の日を作ってください♡」というものがあった。それを目にした瞬間、私は“作りまっせ!尺八の日!!ワシが作らな誰が作るんじゃー!!!“と拳を握りしめ色めき立った。何せ♡である。期待されたらそれに応えるのが男である。

 

さて、どうやって『尺八の日』を喧伝していこう・・・と思案しながら、1月8日は他にどんな日があるのだろうと、インターネットで「この日、何の日」の検索をしてみた。すると、出てきたのは『歯ブラシの交換日(なんじゃそりゃ・・・調べてみると毎月8(歯)日が交換日に制定されたとのこと)』『勝負事の日(一か八かですね、うんうん)』『外国郵便の日(1875年より外国郵便の業務が横浜のアメリカ郵便局から日本政府に移管したそう、これは豆知識だ)』の三つであった。よっしゃ!日本の強力伝統楽器である尺八にちなむ『尺八の日』なら、これらの先輩の日と比べてもまったく遜色ないではないか。

私はまた鼻息を荒くして“ガンバロー!尺八の日を世界に!エイエイオーのかわりにツレーツレーだ!ツレーーーーツレーツレーツレーーーー”と、最後はよくわからない一人盛り上がりになってしまった。

 

でも言い続けていれば20年後ぐらいには認知されているだろう。いや、認知されるのだ。とにかく1月8日は『尺八の日』なのだ。そう決めたのであーる。

 

 

閑話休題、今年は年明けから悲しいニュースが続いた。

大歌手であり、関西きってのタレントで名司会者でもあった、やしきたかじんさんが旅立たれた。たかじんさんは私の営業マン時代のヒーローであった。ちょうど私が入社した1983年頃から、歌とラジオのパーソナリティで人気が出始め、数年の内には関西では知らない人がいないくらいの有名人となった。私は、昼は営業の車の中で「聞けば効くほどやしきたかじん」という番組を愛聴し、夜は接待や同僚とのカラオケでその当時ヒットしていた『あんた』『やっぱ好きやねん』『ICHZU』『未練〜STILL〜』を歌いまくった(ちなみに一番好きな曲は『未練〜STILL〜』である)。歌もしゃべりも抜群のすごい人やなあ、と思い常々尊敬していた。その後、私は営業の仕事を辞め、事務職の内勤の仕事に転職したため、ラジオを聞くことはなくなり、たかじんさんはテレビで拝見するようになった。テレビ番組でもたくさんのヒット作を作られたが、特に「たかじんnoばあ〜」はプロレスとともに、毎週の放送を心待ちにしている数少ない番組だった。

 

64才での旅立ちは、現在ではまだまだ若く、もっともっと活躍していただきたかったことは言を俟たないが、人の何倍もの凝縮した人生を歩まれたことも確かである。ありがとうの言葉とともにご冥福をお祈りしたい。

 

そのすぐ後にまた訃報が飛び込んできた。

村岡実先生、享年90才。

音楽業界人から尺八界へ転身された村岡先生は、横山勝也師、宮田耕八朗師とともに東京モダン尺八トリオ(東京尺八三重奏団)を結成、それを日本音楽集団へと発展的解消させ、以後は現代邦楽から離れ、演歌、歌謡曲、民謡、ジャズ、ポピュラー、現代音楽etcありとあらゆるジャンルの音楽で尺八を広められた。まさにパイオニアであり、大御所中の大御所であられた。

 

一時期体調を崩され、その後気功治療などで復活を果たされたという。私が実際にお目にかかったのはその時期であった。ある時、業界誌に大々的に「村岡実・気功尺八講習会〜ラクに音が出せる健康的吹奏法が学べます」「尺八はプゥーと吹くものに非ず、
フゥーと吐くものなり!」というキャッチコピーとともに、グラサンに怪しげなジャケットを着たチリチリ頭の人が尺八を吹いている写真が載った。胡散臭さプンプンといった感じであったが、村岡実という尺八家のお名前は、そのちょっとはじけたご経歴とともによく存じていたので、“あー、この人が村岡実という人なんだ”と納得した。

 

ちょうどその頃、私は尺八を吹く時の身体の使い方や、呼吸法と気の関係などにたいへん興味があり、自分なりにいろいろと勉強していた。現在なら“これを受講しなくていつやるの、今でしょ”といったところか、私は即座に申し込み、埼玉の蕨まで先生に会いに行った。初めてお会いする村岡先生はゆるみきった身体から独特のオーラを発しておられた。受講生のほとんどが年配の門人の方たちで、その中に一人若造が混じっているという感じだった。講習内容は独特で面白かった。その講習中に、受講生に数分の一人吹きの時間が与えられ、好きな曲を吹き、先生がコメントをする時間があった。私が福田蘭童曲を吹くと「イヤー、いいねえ。君のような人に私のあとを継いでもらいたいね」とおっしゃられた。もちろんリップサービスに過ぎなかったのだと思うが、まだ駆け出しのプロだった私はずいぶん勇気づけられたのを憶えている。

 

そのゆるみきった身体の秘密を探りたく、その後、私は都合がつけば大阪、埼玉、また大阪と受講に通った。先生の吹奏は音と共に気が溢れていた。そして、まっすぐ吹かれた時よりも、プ、プ、プや、ふっ、ふっ、ふっと吹かれた時にどわーっと大量の気が放散されていてとても興味深かった。身体の使い方でずいぶん参考にさせていただいた、私にとっては恩師の一人である。

 

尺八の世界にあって、村岡実という人はそれなりの評価をされてきてはいる。しかし、様々なジャンルで尺八の地平を切り開かれた多大なる功績は、もっともっと高評されてしかるべきものだと思う。90才での旅立ちは大往生であるが、個人的には100才まで生きて生涯現役を貫いていただきたかった。

先生には感謝の言葉とともに、お疲れさまでした、と申し上げたい。

 

 

私も今年の『尺八の日』(忘れてはいけません)で53才になった。

The Times They Are A-Changin’  時代は移り変わってゆく。しかし、この一年も勉強と挑戦する心を忘れずに、自分が出来ること、次の世代に伝えること、を一つ一つ積み重ねていきたい。やはり尺八は一生修行である。

 

随筆石と竹「尺八の日」” に対して10件のコメントがあります。

  1. na☆co より:

    こんにちは。
    尺八の代表選手ともいえる「一尺八寸管」から考えても相応しい日である上、
    石川さまのお誕生日が何の因果か1月8日。
    まさに運命の出会いとしか思えないような、総ての符号がピッタリと一致する『尺八の日』だと思いました。
    私も、今後は謹んで広めさせて頂きます!

    どうもありがとうございました♡←これは感謝の気持ちです。

    53歳の後半戦もどうぞお元気でノリノリでご活躍くださいますように( ̄人 ̄)

    1. admin より:

      na☆koさま
      ありがたいコメントをいただきこちらこそ感謝感謝です。
      そうでした、ご指摘のとおり53歳も後半戦に突入します。
      身体のあちこちがすごい勢いでオッサン化しつつありますが、ノリノリで突っ走りたいと思っています。
      今後ともよろしくお願いいたします。石川

  2. na☆co より:

    石川利光さま、七夕のコメント返し、ありがとうございました!!
    こちらこそ、今後ともよろしくお願い申し上げます。

    1. admin より:

      なおこ様、早くも2014年が終わり新しい年が始まろうとしています。「尺八の日」は唱え続けて行こうと思っています。引き続きよろしくお願いいたします。いしかわ

  3. 大重 普竹 より:

    私は尺八愛好家です38年吹いていますが、まだまだ技芸は未熟です。私は主として東海地方に存在する西園流の奏者です西園流は虚無僧寺遠州濱松普大寺の虚無僧玉堂・梅山師らに一世兼友翁が普大寺虚無僧曲十一曲を習得し今日西園流で吹奏されています、今年東海地方で1月8日を尺八の日として記念演奏会を開催します。参加者は都山流・琴古流・上田流・竹風会・西園流など流派を越えて日本の伝統的楽器尺八の愛好家を増やし邦楽の底上げを目標にしたいと思います。
    参加費1ステージ2,000円(条件三曲・本曲・民謡・長唄などジャンルは問いませんが尺八が入る事が条件です)
    名古屋中心部地下鉄(東別院駅)隣接のイーブル名古屋ホールの貸切で終日尺八の演奏をします。尺八の体験コーナーも設定します、入場無料でホールは収容350人です。今年は第1回です来年は1月8日が日曜日、再来年は祝日となります、今年は24組の演奏者を募集したら11月16日現在22組です、もう一息頑張ります。
    参加者の一人から石川先生のメールを知らされました、早速先生に概要を報告致します。アドバイスなど有りましたらご指導をお待ちしております。

    1. admin より:

      大重普竹様
      この度は詳細かつ嬉しいコメントをありがとうございました。1月8日を「尺八の日」として運動をすすめる心強い同志が多数いらっしゃることを知り感激しております。
      私の方でも「尺八の日」公認を目指すべく、少しづつ進めております。今後は情報交換などをさせていただけるとありがたく存じます。
      記念演奏会のご成功を心より祈念しております。
      石川利光

  4. 大重 普竹 より:

    尺八の日、実行委員会を作り現在演奏者募集人員になり打ち切りプログラムを作成しました、参加人員50名内訳三曲合奏地歌(古典10曲、新曲6曲)民謡1曲、古典本曲3曲、歌謡、ポピュウラ3曲・・・・合計23曲 10時~16時です。今回中部で流派を越えてジャンルを越えて、只尺八を吹くそれだけです。
    演奏者は確保出来ましたが、ギャラリーの数が心配です。
    先日愛知県教育委員会や名古屋市教育委員会に後援依頼を出しました。兎に角尺八の楽しみを一人でも多くの方に分かって頂き、吹いていただく、聴いていただく方を増やし邦楽の底上げを実践してまいります。
    石川先生何か妙案が有りましたら、ご指導下さい、必ず成功し再来年は1月8日(日曜日)再々来年は(祝日)です、3回目には定着出来る様に頑張ります、後は実行委員会で演奏会の運営を話し合い、次年度の企画を今年の反省を踏まえてどの様に進めるかが大事と思います。後はマスコミをどう取り込むかが課題と思います。
    又経過や開催の状況をコメント致します。

    1. admin より:

      大重普竹様
      詳しいご報告を頂戴しありがとうございました。素晴らしい行動力で敬服しております。
      マスコミをどう取り込むかは私も腐心しておりますが、今回は立派なチラシを作成されていらっしゃるのですから、考えられるメディア、部署にまずはDMを送付することより始められてはいかがでしょうか。尺八を常に取り上げてくださっている「邦楽ジャーナル」誌に持ち込むことも良いと思います。
      私も何か出来ないか考えてみます。ご盛会を心より祈念しております。
      石川利光

  5. 大重 普竹 より:

    名古屋西園流尺八の大重普竹と申します。名古屋でも石川先生のフアンは大勢います。今年、第2回尺八の日演奏会を開催致します、今年は時間にゆとりを持って21曲で締め切りました、又尺八の多様性と技量のレベルアップ、誰でも参加できる廉価な参加費を目指して進めてまいりました。11月中頃プログラムの作成を致します、現在愛知県教育委員会・名古屋市・地元中日新聞社の後援も頂きました、29年1月8日は日曜日ですので来館者を多く迎え尺八の普及・理解者の増大に努めたいと思います、ご支援宜しくお願い申し上げます。

    1. admin より:

      大重様
      ご連絡ありがとうございました。いつもながら大重様の行動力には感服しております。私も同志として神戸より応援しております。
      愛岐発信で「尺八の日」が全国展開することを夢見ています。
      石川

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

お知らせ

前の記事

2月稽古日