石と竹「CEO」
私にとって日曜日は3mmの日である。
私は毎週日曜日、自分の頭を電動バリカンを使って自分で刈っている。毛の長さを決めるアタッチメントは12mm、9mm、6mm、3mmと、3mmずつ短くなる4種類あって、刈り始めた最初の頃は一番長い12mmにしていた。
まだ髪の毛の本数があるうちはそれでよかったが、だんだん少なくなってくると12mmではスキスキで恰好悪くなってきた。それで、いつの頃からか9mmにチェンジし、また本数が減ってきたので6mmにした(6mmに変える頃には、ちきしょうめ、生えている少ない髪の何割かが白髪になってきやがった)。そしてここ2年くらいは6mmをキープしていた。
今年6月、訪問先のリトアニアで本番の日に紋付きを着てエレベーターに乗った時にちょっとショックを受けた。そのエレベーターは四方が鏡張りになっており、嬉しくなってきょろきょろしていると自分の後頭部が目に飛び込んできた。何とそこには1円玉くらいのハゲが二つ出来ていた。私は仏教徒であるが、このときばかりはオーマイガー!と心の中で叫んだ。まだ比較的本数がある後頭部のその二つのハゲは、皮膚病図鑑に出てくる円形脱毛症のサンプルのように見事なものだった。
自分には見えないのでなんとも無いが、否応なく目に入ってくる周りの人には少なからず不快な(愉しんでいただければそれはそれで構わないのであるが)思いをさせてしまうかもしれない。私は帰国後すぐにアタッチメントを3mmに付け替え刈り上げた。
6mmと3mmではたかだか3mmの違いしかない。しかし、見た感じや手触りは結構違うものである。白髪のせいもあり遠くから見ると殆どスキンヘッドである。
3mmになった私を見た誰かが言った。「気の弱いお坊さんみたいですねえ」。私はそれを否定した。「僕は気の弱いお坊さんじゃない!気の弱い尺八吹きなんだ!」。
そんなネタのような冗談はさておき、先日の新聞記事に興味深いことが書かれていた(2012.10.12毎日新聞朝刊「発信箱」)。アマゾン、マイクロソフト、ゼネラル・モーターズ、ゴールドマン・サックス、などアメリカを代表する有力企業に注目すべき共通点があり、それはCEO(最高経営責任者)の頭がみんなツルツルだということだった。この事実を研究している学者先生が最近学術誌に発表した実験が面白い。髪の毛のある男性の本物の写真と、その写真を電子加工してスキンヘッドにした写真を男女344人に見せ、印象を聞いたところ、スキンヘッド版のほうが、より男らしく、自信に満ち、親分肌で、しかも身長が実際より高く見られたという。この記事を書いた記者は「頭も経営も事実をありのままさらす度胸が強さとして認められる、ってことみたい」と括っていた。
3mm-3mm=スキンヘッド、ということで、もうこの次にはスキンヘッドが待っている石の会CEOの私にとっては嬉しいことこの上ない記事であった。いやあのね、私の場合のCEOはCEOでもChief Executive Officerではなく、今のところCyoshi E Ossanなのであるが、せめてCyoi E Oyajiを目指してさらに尺八にハゲんでゆこうと思う。
スキンヘッドもアリである。