【追悼】KHインタビュー(7最終回)〜才能への責任〜

 

 

CT: あがりにひどく悩む音楽家にどのように声をかけられますか。一番のポイントは何でしょうか。

 

KH: 前に言ったようなことです。

そうね、実際あがりは子供の頃に始まります。なぜなら上手であれば愛されるからです。上手であればご褒美のお菓子がもらえる。上手である、ということがすべての(あがりの)元となります。なぜなら、そうなるとたちまち、人に与えるということから遠ざかるから。それは間違った態度なの。だって、言ってみればすべての人々には善良な心があるのよ。皆いい人なの。私はすべての人には才能が備わっていると信じているの。もちろんレベルは様々だけれどね。でも、その才能をもしも発揮しなかったら、自分の中で恐ろしいことが起こるのよ。私は教える中で学んだんだけれど、多くの人は自分のことを過小評価しているの。自分が嫌いなの。これはとても大切なこと、自己肯定感、私はこれが好きだ、だからこれをやるのだ、というね。本当は自分が自分の名医であり弁護士であり、何でもになれるはずなの。音楽をやるのは、自分の中に音楽があるから。それなのに、それを表すことが出来なかったら、それはこっぴどくあなたを罰することになるのよ。才能とは「私って才能ある!」とかそういうことではないの。才能には責任が伴うの。もしも才能を外に出さなかったら、あらゆるひどい精神的ダメージが来るのよ、肉体的だけではなくてね。だから私はこれを「ニューアプローチ」と呼ぶのであって「ニューメソッド」とは呼ばないの。どうやって音楽にアプローチする(行き着く)のかということだから。

 

CT: 私がお聞きし漏れたことで、おっしゃりたいことはありますか?

 

KH: 楽むことよ!楽しんで、楽しんで、楽しんで、そして与えてください。エネルギーを与えて。リズミックパルスと歌うこと、そして、スウィングして、歌って、歌って、楽しんで・・・与えて!

 

CT: カトー・ハヴァシュさんでした。本当に本当にありがとうございました。お話できてとても楽しかったです。

 

KH: どういたしまして。こちらこそ、ありがとう!

 

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「あがりを超えて」カトー・ハヴァシュインタビュー(1)

KHインタビュー(2)〜ニューアプローチの誕生〜

KHインタビュー(3)〜あがりの原因と対処〜

KHインタビュー(4)〜ホロヴィッツ、クライスラーの思い出〜

KHインタビュー(5)〜ハイフェッツの逸話〜

KHインタビュー(6)〜あがりを予防する練習法〜

 

【出典】音声でお聴きになれます。

http://www.beyondstagefright.com/kato-havas/

 

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Japanese translation(c)Chisumi Ishikawa